少年の嫌いな男はいない─アキカン!レビュー

先日のエントリーで思っていたのよりも遥かに大きい反響があってびっくりしています。
これは続きを書かねば……と戦々恐々としている中、今日のエントリーはアキカン!についてのエントリーです。



前回のエントリーはライトノベル業界について分析しようという試みだっただけに出来るだけ客観的に書くように頑張ったのですが、今回はアキカン!単体についてのレビューなので極めて主観的な形になっています。





 アキカン!は作中で男屋というキャラクターが、「まあ、女の君には恐らく一生理解できないだろうがよく覚えておきたまえ───少年の嫌いな男は居ないのだよ、木崎君」という台詞を言いますが、正にアキカン!という作品を象徴したような台詞だと思います。まあ個人的には男性女性関係なく、頑張る少年が嫌いな人間なんて居ないと思いますが。
 子供と言うほど幼くもなく、大人というほど達観しても居ない、主人公である大地カケルももちろん少年ですが、それだけでなく作品全体からそんな少年の匂いが漂ってきます。もちろん少年ですから未熟な、青臭い部分も数多く残しています。しかしそんな部分すらも愛おしい、それがアキカン!という作品です。

 まあこれだけだと僕がアキカン!という作品が大好きだという事しか伝わらないので、もうちょっと真面目にシナリオについても語ろうかと思います。

 アキカン!という作品は、主人公大地カケル自動販売機で買ったメロンソーダの缶に口を付けると女の子になってしまい、その女の子と同棲することに。缶から人間に変身する女の子───アキカンにはアルミとスチールの2種類のタイプが居て、アルミとスチールに分かれて潰し合い、残った方の缶にジュースの缶を統一することにより資源やリサイクルの効率化を図るという為の戦い、アキカン・エレクト、インテリジェンスポート計画に巻き込まれて行く──という話です。

 まあしかし何度も言うようですが、少年の話、そして付け加えるなら愛の話です。
 一巻から最新刊まで如何に主人公であるかそしてメロン達アキカンが愛に飢えているのかという話です。

 それは例えば少年の過去の傷だったり、少年の友情だったり、少年のライバルだったり、少年と少女のすれ違いだったり。
 そしてアキカンはオーナーに愛されたい、幸せになりたいという感情にあふれています。
 そんな少年の話、愛の話を繰り返しつつも、少年は成長していきます。
すれ違っていたカケルとメロンは徐々にお互いを信頼しあえるように。
 カケルは過去の傷を乗り越え、仲間とともに強大な敵に向かい合う準備を進めて行きます。

 ついでに作者の藍上陸さんの力量も成長して行っているような……。
4巻も十分いい話で涙腺が危ういところまで行きかけましたが、最新刊である7巻ではついに涙腺崩壊しました。
 まさかアキカン!で泣かされる日が来るとは……。

それとこの作品の魅力は脇役たちの素晴らしさからも見つけることが出来ます。
 基本的にこういった女の子がいっぱい出てくる類のライトノベルには男キャラが居ない、居たとしてもギャグパート以外で活躍したり、女の子と結ばれたりはしない傾向にあります。しかしこの作品の親友キャラである甘地五郎は違います。ギャグパートでは蔑ろにされることでギャグになる類の可哀想なキャラクターですが、カケルが本当に困っているとき、力を貸してほしいときには颯爽と駆けつけて力を貸してくれます。原作が完結していないのでなんとも言えないんですが、レズで魔女なキャラクター東風揺花と結ばれる可能性も秘めてます。また3〜4巻で登場するライバルキャラクターの塔堂拳介も少年であり過去の傷があり、カケルとの戦いの後に少年として歩き出します。

まあまだシリーズ7巻でどんな展開になるのかは分かりませんが、個人的にはかなり期待している作品がアキカン!です。王道的な話が好きで、ギャグパートで少しぶっ飛んでいる感の強い作品が好きな人はアニメ化を機会に是非読んでみてください。



 アニメについては……どうなんでしょうね?とりあえず男屋がまるで夜勤病棟の主人公をホモにしたようなやつで吹きましたがwまあ思っていたよりはアキカンやってくれてる気がします。まあ個人的には後半の地の文で表現されてるカケルの心情をどう表すかでアキカンのアニメがどのレベルまで行くか見極めれる気がします。まあアキカンに限らずラノベの地の文で表現されている心情をどうアニメで表現するか、というのはライトノベルのアニメ化に伴う壁だと思います。

 個人的には地の文の心理描写が好きでライトノベルを読んでいる……みたいなところもあるのでアニメでその部分に対する過剰な期待は持ってませんが。アニメはアニメで声優さんの演技といった別ベクトルの楽しみで評価するべきだと思いますし。

 話が若干それたのでアキカンの話に戻しますが、アキカンがアニメ化するという話を聞いたときは多分原作の4巻まで行って終わるんだろうな……と思ってたんですが、キャストやOP見ていると違和感が……。3〜4巻の重要人物である塔堂拳介と舞の姿がどこにもないんですよね。

 代わりに一巻から後は当分出番がないはずのぶどこの姿が一杯。




 このOPを見るに多分原作の3〜4巻はやらない気がします。3〜4巻はカケルがボクサーである塔堂と対峙することで少年としての挫折とそこからの復活を魅せる話で、4巻を読み終わったときに、もういっそここでこのシリーズ打ち切ったほうが美しく終われるんじゃない?と思ったほど綺麗な終わり方をしてたんでアニメはここで終わらすだろうと読んでたんですがどうするんだろう。

 一番可能性が高そうなのは2巻以降アニメオリジナルって線ですが、まさかいきなり原作の7巻に飛ぶという離れ業をやってのけるのか?確かに七巻の内容のほうがアニメ映えしそうな気がしますが、いくらなんでも新しすぎる(12月25日発売)しなぁ……。
 多分アニメオリジナルでコメディやって終わるんでしょうが、とりあえず期待してみていきます。