10月の電撃新作からみる電撃の戦略分析〜長く作家人気を持続させるために〜

電撃文庫の10月新作情報にいろいろおもしろい動きがあったのでちょっと紹介してみます。

まず一つ目


小春原日和の育成日記
著/五十嵐雄策 イラスト/西又 葵
「わたしを……おにーちゃんの手で……“おとなのじょせい”に、して、ほしい
んです……っ」そして、貧乏アパートに暮らす地味っこ改造計画が始まった──。


 西又葵……だと?アニメの二期も決定している乃木坂春香の秘密五十嵐雄策さんの新作です。残念ながら今まで五十嵐さんの作品に触れる機会は無かったのですが、西又葵を持ってこられたらもう読むしかないかなと。


つづいて二つ目はこちら

◆ねこシス
著/伏見つかさ イラスト/かんざきひろ
五度目のチャレンジでようやく「人化の術」を成功させた猫又一家の三女・美緒。
「俺の妹」コンビが贈る、ちいさなトラ猫の人生お試しストーリー!

 巷で大人気の作品、俺の妹がこんなに可愛いわけがないのコンビが送る新シリーズ。ついに文庫化です。




◆へヴィーオブジェクト
著/鎌池和馬 イラスト/凪良
超大型兵器オブジェクト。その操縦士、『エリート』。雪原の戦場に派遣留学し
たクウェンサーが出会ったのは、そんな素性を持つ奇妙な少女だった――。

 そしてまさかのかまちー新作。禁書の続きはどうした!?と叫びたくなりましたがこっちはこっちで楽しみです。



しかしふと思ったのですが、最近人気シリーズを抱えつつも平行して新しいシリーズを開始する、というスタイルが増えてきている気がします。
何本も人気シリーズを抱えている成田良悟さんはとりあえず別格としておいておいて、ここ最近始まった既存の連載を抱えつつ始まった新連載をあげてみると、


・伝説の勇者の伝説(富士見ファンタジア文庫)の鏡貴也さんがいつか天魔の黒ウサギ富士見ファンタジア文庫)をスタート

レンタルマギカ(角川スニーカー)の三田誠さんがイスカリオテ電撃文庫)をスタート

初恋マジカルブリッツスーパーダッシュ文庫)のあすか正太さんがふるこんたくと!(角川スニーカー)をスタート

・レヴァイアタンの恋人(ガガガ文庫)の犬村小六さんがとあるとある飛空士シリーズ(ガガガ文庫)をスタート



と中々の数。ぱっと思いついたのをあげただけなので、多分まだあるんじゃないかな?この数の多さは、いかにしてシリーズ終了後も作家の人気を持続させるかについて考えた結果だと思います。

 鏡貴也さんが後書きで、ライトノベルは作家では無く作品に人気がつくと言われている、といった趣旨の発言をしていましたが、その作品人気をそのまま次の作品の人気へとシフトさせるために、シリーズ終了前に新シリーズを開始する、というのは非常にうまい戦略だと思います。

 作品に人気がつく、と言われている理由のひとつにライトノベルの場合新シリーズになって絵師が変わると当然のことながらその作者が前に何を書いていたのかが分からない、という点があります。

 作家・絵師の名前まで覚えていない人が本屋に行った時に、灰村さんの絵を見て「あ、禁書の絵師の人が新シリーズで挿絵書いてる」とはすぐに分かっても、鎌池さんの作品を見て「あ、禁書の人が新シリーズ始めた」とは中々判断できません。もちろん帯等で「とある魔術の禁書目録鎌池和馬の新シリーズスタート!」とでも書いておけば一定の効果はあると思いますが、やはり絵の分かりやすさにはかないません。

 そういう意味で、いつか天魔の黒ウサギの売り方は非常にうまいと思いました。
 まず、専用の折込広告まで用意する手の込みよう。
 六ヶ月連続発行という企画で注目を引くやり方。
 そして何よりも作品内の後書きで、新シリーズ開始しました。、というアナウンスを伝勇伝内で行なえたこと。
 なにせ伝勇伝読んでる人は基本的に鏡貴也さんの作品が好きなわけですからきちんとしたアナウンスがあれば、非常にすんなりと作品の人気を次のシリーズへと移行できます。

 
 そこまで考えて、ふと思ったのが今回の鎌池和馬さんの新作です。
メルマガを読んだ時にはびっくりしましたが、よく考えれば、今月の禁書新刊の後書きでは特に新作について触れられていませんでした。
 正直これはかなりもったい気がします。後書きで禁書とは別の新作書いてますよ〜と一言書くだけでもだいぶ違ってくると思うんですがね。10月の電撃文庫MAGAZINEとかでなんかやるにしても、小説に勝る効果は中々出せないんじゃないでしょうか。ただ秋からはじまるとある科学の超電磁砲乃木坂春香の秘密のCMの時間にとある禁書目録シリーズの〜、と宣伝できればそんな細かいことも関係なくなる位の効果がありそう。


 また、作家の人気を持続させる方法としては他にもいろんな手法が考えられます。
 たとえば藤原祐椋本夏夜コンビ、川上稔さとやすコンビのように作家と絵師の組み合わせを固定してしまう方法。このコンビを何回か繰り返せば、またこのコンビで新シリーズ始まったのか、と割とスムーズに作品人気を移植できます。

 他にも例えば作家のブログ等で新シリーズ開始します〜と言えば、その作家のブログを追っかけてるくらいですから当然次のシリーズも買ってくれるでしょう。
 そういう意味で“面白いブログの連載”と言うのも販促の1つだと思います。バカとテストと召喚獣井上堅二さんのブログなんかはコメディ作家の面目躍如といった勢いで非常に面白く、新シリーズ開始する時の宣伝効果としては中々のものがあるんじゃないかと思います。

 後は一度フォローさえすれば自動で情報を受け取れるtwitterなんかもうまく使えればかなりの宣伝になるんじゃないかな。