ライトノベル業界の2010年問題についてその1
大学で友人が“製薬会社の2010年問題”というものについて発表しているのを聞きながら、「あれ?これってライトノベル業界にもあてはまるんじゃね?」と思ったので今回のエントリーはライトノベル業界の2010年問題についてです。
そもそも2010年問題って何?という話ですが、ものすごく簡潔にまとめると、2010年付近で大手製薬会社の売れ筋の特許付の薬の特許が切れてしまい、ジェネリック医薬品などの安価な医薬品との競争にさらされることになり困ったな、という話です。
簡単に言い過ぎて語弊があるかもしれないので詳しくはwikiを見てください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/2010%E5%B9%B4%E5%95%8F%E9%A1%8C
ではライトノベル業界の2010年問題とは何か?と言うと、製薬業界のブロックバスターの特許が切れてしまうように、ライトノベル業界のブロックバスターとも言うべき大人気シリーズの多くがが2010年付近に完結する可能性が高い、という問題です。
例えばこのライトノベルがすごい2009の上位10作品で分析してみるとこの問題が鮮明に見えてきます。
一位 文学少女シリーズ
2008年完結済み。ただし文学少女関連の関連企画は動き出しているので詳細しだい?
二位 とらドラ!シリーズ
完結目前。物語はクライマックスに突入しており、おそらくあと2〜3巻で完結する可能性が高い。
四位 とある魔術の禁書目録
完結目前?物語はクライマックスに突入しようとしているものの引き伸ばそうと思えば引き伸ばせる範囲。というかアレイスターさんは数巻前に何か暗躍しようとしてたはずなのに何してんだ。
六位 化物語シリーズ
次巻の偽物語(下)で完結
八位 フルメタルパニック
完結目前。クライマックスに突入しており、引き伸ばしも不可能に近いと思われる。
完結……?最新刊にて終わりを匂わすような記述あり。続いたとしても2010年付近には終わる可能性高し。
十位 とある飛行士への追憶
一巻読みきり……?と思いきや続編が出る模様。続編を読んでみないと分析不能。
文学少女シリーズ・とある飛行士への追憶については分析し難いのではずすとしても、このライトノベルがすごい2009上位10作品の中でも実に半分が2010年末にはシリーズ終了していそう、という状況です。
その他にも人気シリーズで完結あるいは完結目前の作品として
灼眼のシャナシリーズ
完結目前。引き伸ばしはおそらく不可能
ムシウタシリーズ
bugシリーズが完結。本編もクライマックスに向け加速中。
戦闘城塞マスラヲシリーズ
完結。ただし現行のミスマルカシリーズはおりがみ・マスラヲと同じ設定の世界観。
祐巳・祥子編完。しかし終了ではなく、続編は普通に出る。
と完結・完結目前の作品が目白押しです。ぱっと考えただけでこれだけの作品が出てくるので、真剣に調べてみればまだまだ数は上がってくると思います。
特に昨今のライトノベルブームの火付け役ともいえる、フルメタルパニック、灼眼のシャナシリーズとそれを受け継いだ、次世代の雄であるとらドラ、禁書目録シリーズが終了してしまうことは一つの時代の終わりを感じさせます。
この面子は全員が完結目前の作品で大ヒットした人達なので、次のシリーズでどこまでいけるか未知数、というのも2010年問題の難しいところの一つです。
同じ人気シリーズ終了にしても化物語の場合、作者の西尾維新さんは戯言、きみぼく、りすか、刀語など次々と人気シリーズを作り出しているので次回作自体に不安はありません。さらに西尾維新さんの読者は現状ではほぼ間違いなく最初に原作を読んだ人なので、ラノベ読みである可能性が高く新シリーズへの読者の以降もスムーズに行われることでしょう。
しかしフルメタルパニックや灼眼のシャナシリーズの場合はアニメから入り、ラノベはフルメタ・シャナしか読まないという人も数多くいることが予想され現在の人気が次シリーズにスムーズに受け継がれるかは疑問の余地が残ります。
というのも普段ラノベを読まない人が“賀東招二の新作”に即座に反応できるでしょうか?
もちろん人気作家なので売ろうとするマーケティングの努力は行われるでしょうが、今の人気をそっくりそのまま受け継ぐのは難しい気がします。
魔術師オーフェンで1000万部を売った秋田禎信さんのシャンクもオーフェンほどの地位を獲得できなかった悲しい前例もありますし……。
とまあ、2010年問題についてはこのようなところですが、これでライトノベル業界はお先真っ暗だ!などというつもりは毛頭ありません。
スレイヤーズ、魔術師オーフェンが広げてくれたライトノベル業界をフルメタ、シャナ、禁書、とらドラは十分に盛り立ててくれました。
そしてこれからは一つの時代が終わり、新しい時代に続いていくことでしょう。その時代を代表するのは前述のシリーズを無事完結させた賀東さん達かも知れませんし、まったく別の新しい誰かかもしれません。
現時点でライトノベルの先頭で旗を振ってくれる人といえば、谷川流さんか西尾維新さんが最有力……というか現時点でも十二分にお二方は時代を築いていると言ってしまっても問題ないでしょう。……谷川さんは筆が遅いのが玉に瑕ですが。
その1と銘打ってその2を書いたことがない当ブログですが、その2では芽吹きつつある新しい息吹。2010年問題を打ち崩し、新時代を築いて行ってくれそうな新シリーズの紹介をできたらと思います。