凌辱規制に関する言い訳を考えてみた。

 アイルから発売されている桃華散ると言う作品をプレイしてみたところ非常に面白く、またこの作品のテーマは現在話題になっているエロゲーの凌辱表現の規制に対する言い訳の一つになりえるのではないか?と思ったのでエントリーを書いてみました。

まずはこのエントリを書く原因になったゲームの紹介から。

http://www.ail-soft.com/touka/pro_tou_top.html

 このゲームは主人公の桃華視点で桃華が凌辱されるところから始まる女性視点の被凌辱ゲームで、その後桃華が自分を凌辱した男達に対する復讐を決意する所から物語が動き出しています。


 このゲームには大きな特徴が一つあります。それは決して凌辱を肯定的に捉えている作品では無い、というところです。
 凌辱を受けた主人公は自分をレイプした男に対して木刀で襲いかかり腕の骨を折るなどして入院させるなど、凌辱を行ったものに対する罰の執行が行われているルートがあります。
 
 また調教され、性の快楽に目覚めてしまうルートにおいても、もの悲しい音楽が流れ自分が変わってしまったことに対する悲哀が語られるのです。
そんなシーンの一部を下に抜粋してみました。
「女の子の話をしてあげましょうか(略)
その子はね、頑張ったの……とても……とても、ね。事故にあって足を悪くした弟が、剣道をやめてしまって……っ、から、は……弟の分までって……
その事故で亡くなってしまった、母さんの分も一生懸命生きようって……(略)
そんな毎日が続くと思っていた……
ささやかだけど平穏な毎日が続くって。
でも、そうはならなかった。
顔も見たことの無い男達に、犯されたの。
レイプされて……処女を奪われて……ふふっ、うふふ……。
あなたは今、その女の子とセックスしてるのよ?
笑いなさいよ、いつもみたいに。
ほら、ほらあっ!
気持ちいいでしょ?楽しいでしょ?
感触を言って見なさいよ!
あなた達が壊した、あなた達がこんなにした───
あなた達が殺した女の子の感触を!」
「な、何を言って……お前は生きてるじゃ───」
「殺したのよ!
たとえ願い通りにはいかなくても……!
映画みたいな恋愛なんかできなくても……
結婚してっ、子供を生んで……っちっぽけで良いからささやかな幸せを掴みたいと思っていた!
そんな未来のわたしを……貴方達はっ!
身勝手に!
気まぐれに!
殺したのよ!」

かなり長くなりますがこれでもまだほんの一部です。
その後にも
「ほ、ほら、こんなわたしを誰が愛せるの?誰がわたしをあいしてくれるの?」

「もう無理よ……。わたしには人並みの幸せなんかつかめない」

などの印象的な台詞が騎乗位で男の上に跨った桃華の口から語ら、凌辱されてしまったが故の悲哀を訴えかけてきます。


つまりこの作品のテーマの一部には「凌辱された女の悲劇」というものが確かに含まれているのです。


 少し話は飛びますが、凌辱表現の規制が問題になったときによく「じゃあ人殺しを助長するからサスペンス禁止な」や「なら当然戦争映画なんてもってのほかだよな?」等の意見が目に付きますが、流石にその論法には無理があると言わざるを得ません。
 なぜならTVで放送されているサスペンスは決して人を殺すことの快感が描かれているわけではなく、殺人に向かわざるを得なかった背景、そして殺してしまったことに対する後悔、大抵犯人は殺人を犯したことを後悔し、時には崖から身投げさえ行われます。
見もふたも無い言い方をすればサスペンスは「殺人をすると不幸になるよ!だからしちゃ駄目!」というような理由付けをすることが可能であり、それゆえに殺人という人権に対する侵害を行う作品を地上波で放送することができるのです。
 戦争映画にいたってはもっと顕著に戦争の悲哀を伝えるための映画と言うことができるでしょう。

 一方で現在発売されている凌辱ゲームの大半は主人公が凌辱に対して肯定的に捉えているどころか、女性の方も凌辱されて奴隷の身分になったことを幸せに感じているような描写の作品が大半です。確かにBADENDで主人公が破滅する作品もありますがその描写の密度は凌辱成功ルートよりも非常に薄く、BADENDではEDが流れないことも多いなど、これでは「凌辱ゲームは女性の人権侵害を助長するなどと言われても」ある種仕方がないでしょう。

しかし、桃華散るは違います。この作品では凌辱は徹底的に悪であり、法の裁きでこそないものの凌辱を行った側にたいする裁きも行われます。(最もルートによっては行われない場合もありますが、主人公の復讐が失敗という形ですのでゲーム性を保つためにもあるていど仕方ないでしょう)
 つまり、この作品においての凌辱表現は凌辱の悲哀を表現する為のツールであり、決して凌辱を助長するためのものではないのです。

 またこの作品には「でも文学だって凌辱やNTRしてる作品結構あるよね」といった意見にも対応されています。この作品のトゥルーENDは主人公がレイプ犯に対する復讐にけりをつけ、立ち直るさまを描くものでもあります。そう、レイプされてもなお立ち上がる女性の強さを描くための必要悪としての凌辱であり、決して単なる性的欲求を満たすためのものではないと断言できます。




もちろん全ての凌辱ゲームをこの作品のようにしろというのではありません。
しかし、凌辱ゲームの中の凌辱される女性の悲哀というものの色合いを濃くしたり、主人公の破滅の描写を丁寧に描くことで、
「凌辱ゲームはレイプを助長する!人権侵害だ!」
などと訴えてくるやからに対して、
「失礼な。我々は凌辱作品を通してレイプの悲哀を訴え、この世からレイプを無くそうとしているのです!」
と胸を張って言い返すことができるでしょう。
あるいはレイプされた後の女性を丹念に描くことで
「あくまでも文学的な意図があって凌辱を行ったわけであり、決して凌辱そのものが目的ではない」
などと言い張ることも不可能ではなくなるかもしれません。

そう、例えばこの桃華散ると言う作品の全てをプレイした誰が
「このゲームは凌辱を助長する」
などと言えましょうか!
















ただ
「でも特典にHなおもちゃついてんじゃん。それって性欲を満たすために作られてんじゃねえの?」
と言われたら答えに窮してしまいますが。