何故 咲-saki- がアニメ化までいけたのか考えてみる。

咲 Saki (1) (ヤングガンガンコミックス)

咲 Saki (1) (ヤングガンガンコミックス)

先日友人から『咲-saki-がアニメ化されるみたいなのでとりあえず読んでみたけど麻雀のルール分からんからまったく理解できない』みたいな趣旨のメールを貰って、そういえば咲っていまいちルール説明してないよな、と思い今回は咲-saki-についてエントリーを書いてみました。

どのくらい説明しているのかな……?と思い最初から読み直してみると、ページの隅っこに
※『三色』……三連続の数字の組(順子)を三種類の絵柄(萬子・筒子・索子)でそろえる役。2翻

といった説明がありますが、上がったときの手牌の扱いが小さかったりして、ルールが分からなければピンとこないというのも無理ないかな、という印象でした。

第一話で主人公の咲が3回連続プラスマイナス0を達成するのですが、これにしても麻雀をやったことが無いと、作中の扱いからなんとなく凄いんだろうな……ということは読み取れても実感としてどんなものなのかピンとこないと思います。

更に極めつけは第2話。
2話では咲が±0を達成する為の点数計算が割りと細かく出てくるのですが、これも分かりづらい。
「こうなるとプラマイゼロに4100点から5000点まで。その条件に合うのは70符2翻のみ」

ある程度麻雀のルール分かってても、細かい符計算は無視してる人もそれなりに居ると思われる中70符ですよ。
2翻って2000点じゃねーの?って人まで置いてきぼりです。


例えばこの漫画が近代麻雀で連載していた場合は、この程度のルール説明でも十分でしょう。
そもそも麻雀のルール知らない人が近代麻雀を手に取るケースは極僅かでしょうから。
しかし咲-saki-が連載しているのはヤングガンガン
ヤングガンガンの読者が全員麻雀のルールを把握している、というのは考え辛いです。
普通なら読者を置いてけぼりにしている漫画がアニメ化まで行く人気作になる、というのは考えづらいのですが、何が良かったのでしょうか。
とりあえず3つほど原因を考えてみました。


①ヤンガン読者の麻雀認知度が意外と高かった。


咲の前にアカギが麻雀漫画のアニメ化を達成していますし、麻雀事態の知名度が意外と高かった、というのもあるのかもしれません。アカギの序盤は何気に親切にルール説明してくれますしそこから麻雀を知った人も結構居るんじゃないかと。
ネットをやっていれば、福本さんの作品のネタに触れる機会は決して少なくないでしょうし。


②絵柄・シナリオが良かった。


麻雀とかどうでもいいけどとりあえず女の子が可愛いから読むよ!って人が意外と多かったのかもしれません。
表紙につられて買ったら、実は麻雀漫画だったなんてケースもあったんじゃないでしょうか。
近代麻雀で連載している麻雀漫画は基本的に麻雀しかしないし、麻雀以外での人間関係は希薄な作品が多い中、咲では仲間同士の友情や麻雀に関係ないキャラクターの個性にもページ数が割かれて、作者の絵柄とあいまって麻雀以外のパートもあるていど楽しめます。
また高校生の麻雀大会という爽やか路線もプラスに働いています。
麻雀漫画と言うと負けたやつは借金を背負って破産したり、血を抜かれて干からびたり……というダークなイメージがありますが(むこうぶちやアカギの読みすぎなだけでそうでない麻雀漫画もいっぱいあるとは思いますが)、負けても全国に進めなくなるだけという、非常にクリーンな麻雀漫画というのもヤンガン層に受けた一因でしょう。


③ある意味、麻雀漫画では無い。


こういうと語弊がありますが、咲の麻雀は麻雀のルールを把握してる必要なんてほとんどないようにも思えます。
と言うのも通常の麻雀漫画で良くある、あの捨て牌の③は②③③からの外し臭い……とか、この⑤を切れば聴牌だが相手の捨て牌に⑤は切りにくい……と言った相手の河を読む行為や、オーラスで満直跳ツモが条件、この配牌からそれを満たすためには……といった麻雀のルールを把握していることが前提の場面がほとんど出てこないように思えます。
捨て牌読みの場面があっても、話の焦点はそこに無いのでなんとなく、こいつの読みは凄い、こいつの読みは大したことがない、と把握できれば十分なケースも多い印象が。

総合するとスケールの小さいムダヅモ無き改革、と言ったところでしょうか。
あれも麻雀知らなくても勢いで楽しめる漫画ですが、あそこまでいかなくてもジャンル的には咲も同じラインに居ると思います。嶺上花開とか完全にその領域かとw




今連載分では県大会の決勝なんですが、こっからどうなるのやら。
全国にはもっと凄いのが居る……みたいな伏線もありますし、その内ダブリー当たり前の世界に突入してもおかしくないかもしれません。