propellerの新作『きっと、澄み渡る朝色よりも、』クリアしました。propeller×お朱門ちゃんこと朱門優ということでただの学園もので終わることはあるまい、と思っていたのですが流石はお朱門ちゃん、やはり期待通りただの学園ものでは終わりませんでした。
 クリアした直後でいまいち感情の整理はついていませんが、これだけは断言できます。すっげえ面白かった。朱門優が好きな人、青山ゆかりが好きな人はこの作品をやって損はありません。というかやるべきです。


 とりあえず感じたことを何点か


1.キャラ絵、イベントCG、背景などが綺麗
 この作品のテーマのひとつに芸術があり、シナリオ上でも学び舎の風景は非常に大きな意味を持っています。その中で描かれた背景が非常に丁寧で美しかった、これは作品の雰囲気を完成する上で非常に大きな要素だったように思えます。特に特定のシーンで流れるように描かれていく背景は必見です。また、キャラの立ち絵もよく動き、コミカルなシーンではデフォルメされたヨダ絵もふんだんに使われておりグラフィックは非常に充実していました。


2.キャラクターが健気で可愛い
 いや、本当に今作のヒロインは素晴らしかった。特にアララギ・ひよの可愛さは反則。いままで青山ゆかりツンデレの女王だとばかり思っていましたがデレデレだった時の破壊力がここまでとは。この作品の特徴として、主人公以外のキャラクターの視点が頻繁に挿入されるのですが、それもヒロインの可愛さを際立たせるのに一役買ってました。おかげで所々感情移入しすぎて涙ぐむ場面も。とりあえず主人公屠られろ。


3.propellerらしい熱さもある。
 propellerと言えば熱い作品だというイメージが強いと思いますが、その熱さはこの作品にも受け継がれています。戦うというのは言葉通りの戦闘だけではなく、何かに抗うということでもある。その意味でこの作品は非常にpropellerらしい熱さに満ち溢れていました、


4 優しさと絆
 この物語の核は絆、そして優しさです。絆とは何なのか、優しさとは何なのか。特に優しさについては、作品内で何度もその捉え方について問われます。そして全てを救うのは優しさと絆。これら2つのテーマがこの作品を通して痛いほど伝わってきました。


5 きっと、澄み渡る朝色よりも、
 タイトルが『、』で終わってるのは怪しいと思ってましたが、なるほど。そこら辺も含め、クリアしてみるとうまいな〜と思う要素がちりばめられていました。



 と、ネタバレしないように書けるのはこんなところでしょうか。しかしこれは『いつか、届く、あの空に。』の時も思ったのですが、普通の学園物のエロゲを期待して購入した人はどんな感想持つんでしょうね。今回はいつ空と比べて学園物としても十二分に面白いと思うんですが、かなりびっくりするだろうなぁ。後、もうちょっとルートが欲しいという思いも無いでもないんですがEDが綺麗だったのでまあ仕方ないか、という気持ちに。十分なシナリオ量とCG量だったしこれ以上を求めるのは酷かな。

 少し今までと違う毛色のpropeller作品ということで、期待半分不安半分でしたが非常に満足できる出来でした。CG面での進化は特に目を見張るものがありまししWHITE−LIPSの曲も感動的でした。前述のとおり熱い要素もありましたし、熱い漢もいました。でもなんと言うか漢臭さが足りなかった。エロゲーに何求めてんだって話かも知れませんがそろそろ東出祐一郎×中央東口×antistarの血沸き肉踊る作品もプレイしたいなーと。

 ということで次のpropeller新作も期待して待ってます。

今になって分かる想い出に代わる君の面白さ

 最近ふと想い出に代わる君をプレイしたくなり、久々にプレイしてみたところ当時とは違った面白さを発見したので今回は想い出にかわる君 〜Memories Off〜のレビューです。

1 何故想い出に代わる君は人気が無いのか?

 想い出に代わる君はメモリーズオフシリーズの第3作目なのですが、シリーズの中では低い評価がされており、6まで出ている本シリーズの中で唯一ファンディスクが発売されていません。無論想い出に代わる君がFDや後日談等必要の無い完結した作品だった、と言う考え方もありますがむしろ後日談でもう少しフォローする必要がある作品だったと思えます。おそらく単純に人気が無かったのでしょう。

 では何故人気が無かったのか?その理由について3点ほど考えて見ます。

Ⅰ 主人公が幼すぎる
 最初に挙げられるのは主人公の幼さです。この欠点は逆に当時はそこまで気づかなかった欠点なのですが、今見ると主人公の行動が随分場当たり的で非常に子供っぽいです。例えば、ネットの掲示板でヒロインを中傷する相手に対して同じレベルでの荒らしを行ってみたり、二股掛けている状況で片方の彼女に合鍵を渡しているのに何も考えずにもう片方の彼女を家に上げてみたり。言動の端々に幼さが垣間見え、その一方でテンチョーや信等主人公の周りの男性が人生経験豊富な大人なのでいっそう主人公の幼さが際立ちます。

Ⅱ ヒロインが理想的なヒロイン像では無い
 次の欠点として攻略可能なヒロインがいわゆる都合のいいヒロイン像、と言うものでは無くプレイヤーをイライラさせる要素を含んでいるところです。やけにテンション高くてイライラしたり、やけに引っ込み思案でイライラしたり。地の文で主人公が不快感を露にすることもあり、それにつられてこちらもイライラしてきます。主人公の前の彼女がヒロインの友達だったことを知ると「アタシはあの子のお下がりなんてマッピラなんだよ!」と思ってみたり、主人公が前の彼女の残したものを隠し持っているのに気づいたら、部屋中にあった自分の持ち物を持ち帰って主人公と縁を切ろうとしたり、と一般的なギャルゲーの予定調和や都合のよさ、居心地の良さからはかけ離れています。

Ⅲ 真ヒロインルートに入るのがめんどくさい
 初プレイの時に何回カナタを攻略しようとしてもルートに入れず、仕方が無いので雑誌を買って攻略記事を見て見たことろ、「全ヒロインを攻略しないとカナタは攻略できない」と知ったときの衝撃は今でも忘れていません。この作品の一番の肝であるカナタルートに入るのに他のヒロインを全員攻略しなければならない、と言うのは確実にこの作品の評価を低くしている一因だと思います。前述のようにこちらをイラつかせるヒロインを全員攻略しないとメインルートに入れない。もちろん全員攻略し、各ヒロインの感情や過去等の情報を入れてからメインルートに入ったほうがよりいっそう物語を楽しめる、と言うのなら文句を言うつもりはありません。一応伏線らしきものもあったことはあったし、事前に他のヒロインを攻略しておくことでテンチョーの偉大さを把握する必要があったと言う点も分かりますが、正直ヒロイン一人攻略すればルート解放でも良かったんじゃないかなと。

2 それでもなお、想い出に代わる君は面白い
 と、ここまでいろいろ酷評してしまいましたが、それでも尚この作品は面白いのです。数々の欠点はありますが、それは全て新しいことへの挑戦でもあります。主人公の幼さはその幼さゆえにヒロインの苛立つ行動をプレイヤーと一緒に怒ってくれるし、そのヒロインの苛立つ部分はリアリティの追及や今までの美少女ゲームに無い作品を作ろうとした結果でしょう。それはこの作品の舞台が大学と言う点にも強く表れています。いわゆるギャルゲーやエロゲーの舞台は基本的に高校や高校的な設定の学園で、それゆえに描かれるのは高校生の恋愛です。しかしこの作品は高校という場から一歩進んだ大学生の恋愛が描かれており、それは他の作品とは違う何かを作りたい、という意思が現れのようにも思えます。
 
 では、高校生では描けない、大学生の恋愛とはなんなのか。それは数々のハードルを乗り越えて辿り着いた先のカナタルートにあり、この作品の真髄です。
 初代メモリーズオフでは、「幼馴染を自分のせいで永遠に失ってしまったトラウマをどう乗り越えるのか」、メモリーズオフ2ndでは「今の彼女と新しく好きになってしまった人との間で揺れ動く心」が描かれました。それに続く第三の問題提起として「死んでしまった男をどうやって乗り越えるか」。 その鍵となるキュービックカフェの存在とその終焉。それを描くには主人公が高校生では幼すぎ、かといってあまりに大人すぎる主人公では物語にならない。だからこそ幼い大学生としての主人公・加賀正午が生まれたんだと思います。

 

 正直この作品は決して万人受けする作品とは言えませんし、僕も当時は良く分からない作品、という感想しかもっていませんでしたが、最近再プレイしてふと、これはこれで面白い、ということに気づきました。
 以前プレイしようとして途中で挫折してしまった人。普通のギャルゲー、エロゲーに飽きてしまった人。是非一度この作品をプレイしてみてください。
メモリーズオフ”でしか描けない独創的な世界がそこにはあります。

角川グループ以外のライトノベルレーベルについてまとめてみた。

 よくわかる現代魔法化物語、大正野球娘等のアニメを見ながらふと、最近角川グループ以外のライトノベルレーベルも元気だなぁと思ったので角川系列(富士見ファンタジア・ミステリー、電撃文庫角川スニーカー文庫ファミ通文庫)以外のライトノベルレーベルについて軽くまとめてみました。かなり主観的な内容になっていますのでご注意ください。

 スーパーダッシュ文庫<2000年7月創刊>

最近アニメ化された作品 アキカン!
現在アニメ放送中の作品 よくわかる現代魔法
アニメ化予定の作品   戦う司書シリーズ
アニメ化されそうな作品 初恋マジカルブリッツ迷い猫オーバーラン

 1991年代からのスーパーファンタジー文庫時代も含めるとかなりの歴史を誇るレーベル。個人的な印象としては『普段ライトノベルを読まない人から見たライトノベルのイメージそのまま』なライトノベルレーベル。
 銀板カレイドスコープあたりを境に一時期アニメ化が止まっていたものの、紅→アキカン!よくわかる現代魔法戦う司書シリーズ と最近アニメ化攻勢をかけている。
 集英社のレーベルなので資金に余裕がありそうなのが強み。またジャンプSQやウルトラジャンプなどで自社レーベルのコミカライズも行なっている。
 


 講談社BOX<2006年11月創刊>

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

最近アニメ化された作品 無し
現在アニメ放送中の作品 化物語
アニメ化予定の作品   刀語
アニメ化されそうな作品 DDD

 
 ライトノベルレーベルかどうかは議論の余地があるのは重々承知ですが、『あなたがライトノベルと思ったものがライトノベル』ということで勘弁していただきたい。個人的な印象としては『一番商売がうまいレーベル』 清涼院流水西尾維新による12ヶ月連続発行を行なうなど話題づくりもうまい。また竜騎士07奈須きのこなどファンの多い作家の獲得にも成功しているのも大きい。
 講談社レーベルということで島田荘司舞城王太郎など普段は講談社文庫で書いている作家の作品もある。
 装丁が独特なこともあり、一冊の値段が高めなので既存の人気作家以外の作品をいかに売り出すかに注目していきたい。


 ガガガ文庫<2007年5月創刊>

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

最近アニメ化された作品 無し
現在アニメ放送中の作品 無し
アニメ化予定の作品   無し
アニメ化されそうな作品 とある飛空士への追憶

 創刊が遅めなこともあってかアニメ化された作品はまだ無い。というかアニメ化なんて二の次で独自路線をひたすら駆け抜けている気もする。一番アニメ化されそうなとある飛空士への追憶でも尺の関係でOVAになりそうだし、TVでガガガ文庫の作品のアニメが見れる日はまだ遠そう。個人的な印象としては『セックス&バイオレンス』。他のレーベルとは一線を画す独自路線には非常に好感が持てる。というかいろいろ頑張りすぎ。先日紹介した“マージナル”や『この小説には暴力シーンやその他過激な表現が含まれています。未成年の観賞の関しては、周囲の大人、保護者の皆様のご配慮をお願い致します。』との注釈がついた“武林クロスロード”、作中で普通にレイプがある“されど罪人は竜と踊る”などいろいろ突っ走っている。というか迷宮王女プリナの人の絵を一般レーベルで見ることになるとは思わなかった。
 小学館レーベルということでぼくらのやブラック・ラグーン絶対可憐チルドレンなどのノベライズも行なっておりそれらの作品も単なるベタ移植にとどまらない作家の個性溢れた素晴らしい作品に仕上がっている。
 また田中ロミオ虚淵玄東出祐一郎などアダルトゲーム業界で活躍している人の作品も多い。



 MF文庫J<2002年7月創刊>

ゼロの使い魔 (MF文庫J)

ゼロの使い魔 (MF文庫J)

最近アニメ化された作品 ゼロの使い魔
現在アニメ放送中の作品 無し
アニメ化予定の作品   聖剣の刀鍛冶 あそびにいくヨ! けんぷファー
アニメ化されそうな作品 えむえむっ!

 現在アニメ放映中の作品こそないものの今後多くの作品のアニメ化が決定している。個人的な印象としてはスーパーダッシュ文庫と同じく『普段ライトノベルを読まない人から見たライトノベルのイメージそのまま』ゼロの使い魔あたりから名前を聞くようになった人も多いと思う。えむえむっ!丸鍋ねこシリーズなどアニメ映えしそうな作品も多く、今後もアニメ化する作品は順調に増えていくのではないかと思われる。



 一迅社文庫<2008年5月創刊>

最近アニメ化された作品 無し
現在アニメ放送中の作品 無し
アニメ化予定の作品   無し
アニメ化されそうな作品 女帝・龍凰院麟音の初恋 さくらファミリア

 去年創刊されたレーベルで、まだアニメ化してる作品はありません。個人的な印象としては『ついジャケ買いしたくなるレーベル』割と絵が綺麗で、なおかつ安定して面白い作品も多く今後が楽しみなレーベル。何作かは次のラノサイ杯で紹介しようと思っているので詳細はそのときにでも。



 GA文庫<2006年1月創刊>

最近アニメ化された作品 神曲奏界ポリフォニカ
現在アニメ放送中の作品 無し(※メイド刑事が実写ドラマで放送中)
アニメ化予定の作品   無し
アニメ化されそうな作品 サムライガー

 メイド刑事まさかのドラマ化。正直この展開は予想してなかった。個人的な印象としては『ポリフォニカポリフォニカの次の話題作をどう作るかが鍵だと思います。
 何気に元keyの涼元悠一さんが一作書いてたりもする。



 HJ文庫<2006年7月創刊>

六畳間の侵略者!? (HJ文庫)

六畳間の侵略者!? (HJ文庫)

最近アニメ化された作品 無し
現在アニメ放送中の作品 無し
アニメ化予定の作品   無し
アニメ化されそうな作品 いちばんうしろの大魔王

 何気に水城正太郎清水文化など富士見系列で書いていた人が移籍しているレーベルです。個人的な印象としては『いまいち話題性に欠けるレーベル』何か話題性のある作品に出てきて欲しいところ。
 遥かに仰ぎ、麗しののライターの健速さんがいたりとぽつぽつ面白い作品もあるので今後の展開に期待。


 
 と以上7レーベル。正直後半になるにつれ情報が減っていった感は否めません。特にGA文庫、HJ文庫辺りはもうちょっと読まないと駄目かなぁ。 
 総括としては、スーパーダッシュ文庫MF文庫Jがアニメ化攻勢をかけてきたり、ガガガ文庫が独自路線で攻めてきたりと角川グループもうかうかしていられない状況になってきたのではないでしょうか。
 とはいえまだまだ電撃の牙城は崩れそうもありませんし、富士見ファンタジアでは新しい世代の作品が軌道に乗りつつあるしでなんだかんだで角川の支配は続くような気もしますが。というか書いてから気づきましたが結局角川側のほうも書かないと片手落ちというかなんというか。

これだからラノベ読みはやめられない。マージナルレビュー

マージナル 6 (ガガガ文庫)

マージナル 6 (ガガガ文庫)


 すっげえ面白かった。読み終わった後の無常感というか脱力感というか……。とにかく最高に面白かった。
 正直これだけでも十分な気がするのですが、これだけはこの作品の面白さを伝えきれないと思うのでもうちょっと詳しく書いていきます。
 
 この作品を一言で表すなら「一風変わったミステリー」といったところでしょうか。この作品の主人公は警察や探偵という立場ではなくアンダーグラウンドサイトの管理人でありいわゆる正義の側の人間ではなく、かといって実際に殺人を犯す立場の人間でもない、マージナルな立ち位置から物語は描かれていきます。さらに「いかにして犯人を見つけるか」だけでなく、「どのようにして殺人鬼に狙われている人間を守り抜くか」にも焦点が当てられているのが特徴です。

 そんな中でも本日発売された6巻は先日発売された5巻と合わせて少し毛色の違った作品となっています。このシリーズでは姉妹が虐待を加えていた義母を殺すところから始まり、どうやって完全犯罪を成し遂げるかを焦点に描かれるいわゆる倒叙ミステリーというジャンルの作品です。

 人を殺す事で壊れ始める日常。彼女たちの結末はどうなるのか。主人公はこの事件にどのような結論を出すのか。
 

 作品の一部を抜粋することでこのレビューの締めとしたいと思います。



「……音羽さん、『殺人はあなたを幸せにしたのですか?』」
音羽は少しためらったあと、首を横に振り、弱々しく喘ぐ。
「あんなこと、やらなきゃよかった……」



 この作品を第一回小学館ライトノベル大賞に選んだガガガ文庫の編集部は非常に素晴らしいと思います。

よくわかる現代魔法はきっと何かをやってくれる。

 よくわかる現代魔法のアニメが予想外の方向で面白かったので、ちょっとだけ感想を。
 
 何故いきなり3巻の内容から始めるんだ?何だこの意味不明さは?

 正直この一言に尽きます。原作の一巻は『主人公のこよみが家の押入れに入っていた魔法学校のパンフレットを見つけて───』といった感じで始まるオーソドックスな導入でしたが、アニメの始まり方は何故か弓子(幼女)とこよみが敵と戦っているところから始まるという導入に置き換わっていました。

 その後OPが流れて、この後何かの説明があるのか?と思いながら見ていても、どうやら弓子の過去話から始まっているということ以外は特に理解出来ずにこよみが登場。そのまま良くわからないまま一話終了。現代の時間軸での出会いや事件をすっ飛ばして過去の時間軸の話をやってるのでこよみが何を言っているのか、何をしたいのか原作未読の人で理解できた人はほとんどいないんじゃないかという勢いです。
 

 ここで意味分からないしもう見なくてもいいかな、と思って見るのをやめるのは簡単ですが、ここまで意味が分からないと逆に興味がわいてきませんか?
 ともすれば、よくわかる現代魔法自体が良く分からない作品という評価で片付けられてしまいかねない第一話でしたが、この意味不明さはアニメ製作者側が意図して作りだした意味不明さであり、きっと後になって見返せば何らかの意味があると信じてみるのも悪くないと思います。

 原作の1巻と3巻はある魔法でリンクしているのでそこら辺をうまく1つに収束させていけば面白くなる……かも?それどころかそんな予想すら裏切って何かもっとぶっ飛んだことをしてくれるのか、楽しみにしてます。

凌辱系エロゲーの規制について

友人からの連絡で、凌辱系エロゲの販売が規制されることになったと聞いて大慌てで詳細について調べてみました。

とりあえず規制の詳細はこちら。
http://s03.megalodon.jp/2009-0528-2002-19/news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4143799.html  (web魚拓)

リンク先のタイトルだけ読むと、凌辱系が全面的に規制されそうにも見えますが、別に法案が通ったわけでもなく、あくまでも『パソコンソフト業界の自主審査機関がこのたび決めた方針』なので現段階では法的拘束力はありません。

 とりあえず動画も見てみたものの、コンピューターソフト倫理機構の文字が映っていたので少なくともソフ倫で規制されることは間違いないみたいですが、もう片方の自主規制団体であるメディ倫の方の情報が特に無かったように見えるのも問題です。

 というのも、ソフ倫の方だけ規制しててもメディ倫の方が規制しなければ凌辱系のメーカーはそっちに移植すれば良いだけですから。

 更に疑問なのは「凌辱」という言葉の定義も難しいのではないかという点です。「凌辱○○」等のストレートなタイトルの作品は消える可能性が高いと思いますが、どこまで行ったら凌辱なのか、どの辺りまでなら許されるのか、といった評価基準が曖昧になって終わる可能性も捨てきれないと思います。

そもそも既にソフ倫の規約には


第6条コンピュータソフトウェア等の制作・販売において、遵守すべき倫理上の一般原則を次の
とおり定める。
(1)国家、法および社会正義
・人種、民族、あらゆる国の習慣、風俗や国民感情を尊重する。
・民主主義の精神を尊重する。
基本的人権を尊重し、特定の個人や団体の名誉を傷つけるような表現はしない。
・法と社会秩序、道徳を尊重し、法律で禁止されている行為については、その表現は慎重
にし、肯定的表現はしない。
・暴力、犯罪を肯定したり、軍国主義、戦争などを正当化しない。
・老人、幼児など社会的に弱者に当る人には思いやりを持った内容とする。
身体障害者知的障害者等の表現は極力抑制する。
・人命を軽視しない。
・あらゆる職業を蔑視しない。
・特定の地域を中傷した表現はしない。
(2)宗教
・信教の自由を尊重し、これを不当に中傷、愚弄、侮蔑、憎悪したりしない。
・宗教、宗教家、宗教儀式の尊厳を傷つけないように留意する。
(3)教育
・教育者や未成年者の表現は極力抑制し、慎重にする。
・児童及び青少年の人格形成に資し、豊かな情操と健全な精神をそこなわないよう留意す
る。
・法律上、未成年に禁じられている行為を正当化しない。
・動物はこれをむやみに虐待しない。
(4)家庭、性
・結婚及び家庭生活を大切にし、これを損なうようなことを肯定的に扱わない。



などとありますが、「……ん?」と首をひねるエロゲユーザーも多いはずです。
率直に言うと、「あれ?あんま守られてなくね?」という項目が結構多い気がします。
例えば「人命を軽視しない」とありますが、これは人が死ぬのが駄目なのか、大量虐殺が駄目なのか、拷問死や快楽殺人等が駄目なのか非常に曖昧です。
そもそも世の中には強姦魔がハッピーエンドにたどり着くゲームも多々あると思うんですが、その辺は全てソフ倫では規制されているのかというと疑問の余地があります。

 そもそも慎重にするとか正当化しないとか自体かなり曖昧じゃね?と思ったあなた。ぶっちゃけ後半のエロゲーに対する条文はもっとすごいです。



(注意事項)
第14条18才未満者への販売禁止ソフト作品(18禁)の制作において表現に注意すべき事項を
次のとおり定める。
(1)性行為の表現について
・恥毛の直接描写は過度な表現をしない。
・アヌスおよび性器内部の描写は控える。
(2)凌辱描写について
・凌辱、輪姦等、暴力が加重される表現は、婦女子への人権侵害や虐待感をともなう性的犯罪であるから取扱いには十分注意する。
(3)SMやその他の表現について
サディズムマゾヒズム等の表現は粗暴性、残虐性などを伴うので、その責めや苦痛等、描写が過度にいたらぬよう特に注意する。
・汚物等の描写は卑猥、醜悪、嫌悪感等を与えるので、簡素な表現にとどめるよう注意する。

  • 8 -

(4)売買春はこれを肯定しない。
(5)出産状況を表現した作品はいたずらに制作しない。
(6)同性愛(レズビアンホモセクシャル)の表現について
・同性愛についても、上記の男女間における性的表現と同様で十分注意する。
(7)近親(血続きの、直系および3親等以内の親族)相姦はその行為を描写した作品は過度な表現をしない。
(8)死姦を表現した作品は過度な表現をしない。
(9)獣姦もしくは性行為に類する獣姦を表現した作品は過度な表現をしない。
(10)男女性器の音声による直接呼称、文章による直接呼称はしないようつとめる。
(11)公序良俗に反しない作品制作をする。



「過度な」「いたずらに」「取扱いには十分注意する」「肯定しない」

曖昧模糊のオンパレードです。
この条文を読んでるうちに、ソフ倫が非常に厳格な規制をかけるという事が微妙に信じられなくなってきました。

まあこれでもメディ倫より厳しいんですがね。


そのメディ倫が規制する可能性ですがこれも相当低いんじゃないかと。
メディ倫はSODさんが中心になって立ち上げた組合ですが、

http://www.sodc.co.jp/detailes/sdms_491.php
http://www.sodc.co.jp/detailes/sdms_638.php

こんなエロゲも真っ青な企画思いついてしかも実行しちゃうような会社が凌辱規制に向かうとは考えづらいものがあります。

あと現実的な問題として
・販売禁止ってじゃあ在庫どうするんですか?
とか
・そもそも凌辱って流通ルートにソフ倫通してなさそうな低価格DLが主流になりつつあるような……

で、ソフ倫を脱退することにによって一番問題になりそうな流通面の方も、すんなりとはいかないんじゃないかな。
まあなんにしても今後の動向には注目していきたいです。

何故 咲-saki- がアニメ化までいけたのか考えてみる。

咲 Saki (1) (ヤングガンガンコミックス)

咲 Saki (1) (ヤングガンガンコミックス)

先日友人から『咲-saki-がアニメ化されるみたいなのでとりあえず読んでみたけど麻雀のルール分からんからまったく理解できない』みたいな趣旨のメールを貰って、そういえば咲っていまいちルール説明してないよな、と思い今回は咲-saki-についてエントリーを書いてみました。

どのくらい説明しているのかな……?と思い最初から読み直してみると、ページの隅っこに
※『三色』……三連続の数字の組(順子)を三種類の絵柄(萬子・筒子・索子)でそろえる役。2翻

といった説明がありますが、上がったときの手牌の扱いが小さかったりして、ルールが分からなければピンとこないというのも無理ないかな、という印象でした。

第一話で主人公の咲が3回連続プラスマイナス0を達成するのですが、これにしても麻雀をやったことが無いと、作中の扱いからなんとなく凄いんだろうな……ということは読み取れても実感としてどんなものなのかピンとこないと思います。

更に極めつけは第2話。
2話では咲が±0を達成する為の点数計算が割りと細かく出てくるのですが、これも分かりづらい。
「こうなるとプラマイゼロに4100点から5000点まで。その条件に合うのは70符2翻のみ」

ある程度麻雀のルール分かってても、細かい符計算は無視してる人もそれなりに居ると思われる中70符ですよ。
2翻って2000点じゃねーの?って人まで置いてきぼりです。


例えばこの漫画が近代麻雀で連載していた場合は、この程度のルール説明でも十分でしょう。
そもそも麻雀のルール知らない人が近代麻雀を手に取るケースは極僅かでしょうから。
しかし咲-saki-が連載しているのはヤングガンガン
ヤングガンガンの読者が全員麻雀のルールを把握している、というのは考え辛いです。
普通なら読者を置いてけぼりにしている漫画がアニメ化まで行く人気作になる、というのは考えづらいのですが、何が良かったのでしょうか。
とりあえず3つほど原因を考えてみました。


①ヤンガン読者の麻雀認知度が意外と高かった。


咲の前にアカギが麻雀漫画のアニメ化を達成していますし、麻雀事態の知名度が意外と高かった、というのもあるのかもしれません。アカギの序盤は何気に親切にルール説明してくれますしそこから麻雀を知った人も結構居るんじゃないかと。
ネットをやっていれば、福本さんの作品のネタに触れる機会は決して少なくないでしょうし。


②絵柄・シナリオが良かった。


麻雀とかどうでもいいけどとりあえず女の子が可愛いから読むよ!って人が意外と多かったのかもしれません。
表紙につられて買ったら、実は麻雀漫画だったなんてケースもあったんじゃないでしょうか。
近代麻雀で連載している麻雀漫画は基本的に麻雀しかしないし、麻雀以外での人間関係は希薄な作品が多い中、咲では仲間同士の友情や麻雀に関係ないキャラクターの個性にもページ数が割かれて、作者の絵柄とあいまって麻雀以外のパートもあるていど楽しめます。
また高校生の麻雀大会という爽やか路線もプラスに働いています。
麻雀漫画と言うと負けたやつは借金を背負って破産したり、血を抜かれて干からびたり……というダークなイメージがありますが(むこうぶちやアカギの読みすぎなだけでそうでない麻雀漫画もいっぱいあるとは思いますが)、負けても全国に進めなくなるだけという、非常にクリーンな麻雀漫画というのもヤンガン層に受けた一因でしょう。


③ある意味、麻雀漫画では無い。


こういうと語弊がありますが、咲の麻雀は麻雀のルールを把握してる必要なんてほとんどないようにも思えます。
と言うのも通常の麻雀漫画で良くある、あの捨て牌の③は②③③からの外し臭い……とか、この⑤を切れば聴牌だが相手の捨て牌に⑤は切りにくい……と言った相手の河を読む行為や、オーラスで満直跳ツモが条件、この配牌からそれを満たすためには……といった麻雀のルールを把握していることが前提の場面がほとんど出てこないように思えます。
捨て牌読みの場面があっても、話の焦点はそこに無いのでなんとなく、こいつの読みは凄い、こいつの読みは大したことがない、と把握できれば十分なケースも多い印象が。

総合するとスケールの小さいムダヅモ無き改革、と言ったところでしょうか。
あれも麻雀知らなくても勢いで楽しめる漫画ですが、あそこまでいかなくてもジャンル的には咲も同じラインに居ると思います。嶺上花開とか完全にその領域かとw




今連載分では県大会の決勝なんですが、こっからどうなるのやら。
全国にはもっと凄いのが居る……みたいな伏線もありますし、その内ダブリー当たり前の世界に突入してもおかしくないかもしれません。